こんにちわ、テッラです。
2022年7月20日、水瀬いのりさんの4thアルバム「glow」が発売されました。
前作「Catch the Rainbow!」から約3年ぶりのアルバムとなります。
本記事は、アルバム「glow」の歌詞をテキストマイニングによって数量化し、その特徴について分析を試みたものです。
具体的には以下の通りです。
①「glow」の頻出語TOP10と水瀬いのり楽曲全ての頻出語TOP10との比較
②これまで発売されたアルバムの特徴語の比較
③「glow」の歌詞における語同士の繋がりの分析
④「glow」のコンセプト分析
⑤さいごに
- 「glow」の頻出語TOP10と水瀬いのり楽曲全ての頻出語TOP10との比較
- これまで発売されたアルバムの特徴語の比較
- 「glow」の歌詞における語同士の繋がりの分析
- 「glow」のコンセプト分析
- さいごに
「glow」の頻出語TOP10と水瀬いのり楽曲全ての頻出語TOP10との比較
「glow」頻出語TOP10
水瀬いのり楽曲全体の頻出語TOP10(「REAL-EYES」までと「glow」までのTOP10の変遷)
※比較分析を分かりやすくするために、「僕」や「私」などの人称表現及び英語詞は排除して集計しています。
「glow」の頻出語TOP10と水瀬いのり楽曲全体の頻出語TOP10を示しました。
「glow」の頻出語第1位は「今」となりました。「今」は、「glow」までを含めた水瀬いのり楽曲全体の頻出語TOP10でも第2位にランクインしている語です。
「今」という語は、これまでと同様に水瀬いのり楽曲において普遍性を持った語であることが確認できました。
その一方、「REAL-EYES」までの楽曲で頻出語第1位となっていた「夢」は、「glow」においてはTOP10圏外という結果になりました。
これによって、「glow」までの楽曲を含めた最新の頻出語TOP10では、「夢」は「今」と同数の第2位となり、これまで守ってきた第1位を明け渡すこととなりました。
「夢」は、今までの水瀬いのり楽曲を象徴する語であると考えられるので、TOP10圏外という結果は「glow」における大きな変化の一つであるといえます。
「glow」頻出語第7位には「歩く」、第8位には「今日」がラインクイン。これらの語は「日常の中にある大切なもの」、「自分の道を歩いていく」という「glow」のテーマを象徴するような語です。
第3位には「ほら」という語がランクインしています。
呼びかけを示す感動詞ですが、「人間味や親しみやすさを感じて欲しいアルバム」というテーマにあるように、聞き手との距離が近くなるような語ですね。
これまで発売されたアルバムの特徴語の比較
上記の図はそれぞれのアルバムの特徴語を視覚的に把握できるようにした図です。
アルバムタイトルに近ければ近いほど、そのアルバムに特徴的に出現している語であることを示し、反対に原点に近い語はどのアルバムの特徴語でもない、つまり、普遍的に出現している語ということになります。
「glow」の近くにある特徴語をいくつか見ていきます。
すでに頻出語TOP10にも登場した「歩く」「今日」及び「日々」という語は、「日常の中にある大切なもの」という「glow」のテーマを反映した語といえます。
一方、「始まる」という語にも注目です。
インタビューでは、「glow」というアルバムを通じて「水瀬いのり第2章」がスタートしたと語られていました。
「ねぇ」という呼びかけを示す感動詞は、頻出語TOP10の「ほら」と同様、「人間味や親しみやすさを感じて欲しいアルバム」というテーマを反映した語であるといえるでしょう。
一方、「glow」の頻出語TOP10圏外となった「夢」は、「glow」とは反対側の遠い場所に位置しています。
「glow」において「夢」の重要性が低くなったことが分かる結果となりました。
「glow」の歌詞における語同士の繋がりの分析
どのような言葉がどのような言葉と一緒に使われているのか、語同士の繋がりを分かりやすくしたネットワーク図です。
「glow」頻出語第2位は「見る」でしたが、「glow」において頻繁に「見ている」ものは「空」であることが分かりました。
「道」-「歩く」、「日々」-「行く」といった語の繋がりは、「日常の中で大切なものを見つけながら自分の道を歩む」というテーマを反映した繋がりであるといえます。
「ほら」という感動詞は最も多くの語と結びついており、様々な歌詞の中で使われているのではないかと考えられます。
タイトルにもなっている「glow」と意味が近い「光」という語は、「数える」という語と結びついています。
「glow」において「光」は大きく輝いたり全体を照らすというものではなく、数えられるくらいに一つ一つの個体として認識できる存在ということでしょう。
「光」-「数える」という繋がりは、日常にある小さな「光」を見つけるという「glow」のメッセージを示した繋がりであるといえます。
また、これをライブの場面に置き換えると、ファンが持っているペンライトの光を一つ一つ数える、そんなたくさんの光の中で大切なものが見つかったといういのりちゃんのメッセージかもしれません。
「手」-「繋ぐ」、「手」-「重ねる」という語の繋がりも非常に大きな注目ポイントです。
「手を繋ぐ」「手を重ねる」というフレーズはいずれも人の繋がりを連想させるフレーズです。人との繋がりや連帯といったメッセージも、「glow」におけるテーマの一つではないかと考えられます。
「glow」のコンセプト分析
この項目では、いくつかの語をコンセプトに従ってグループ化し、コンセプトごとに集計・分析を行ったものです。
「glow」のコンセプト第1位は、「伝達・情報」となりました。
このコンセプトは、「声」「言う」「言葉」など、情報や情報の伝達を連想させる語をグループ化したコンセプトです。
水瀬いのりさんは、7月20日放送のNHK-FM「ミュージックライン」にゲスト出演した時、「輝きを感じる瞬間」として以下のようなお話をされました。
ありがとうと言われた瞬間、言葉を交わし合う瞬間に輝きを感じます。この3年があったからこそですけど、言葉を声に出したときとか目を合わせて何かを伝えた時にしか走らない電撃ってあるじゃないですか。それは生きてるなあって感じるし、すごくキラキラ光るものを感じて、そういう人であり続けたいなと思うような出来事が日々重なっています。
人とのコミュニケーションが途絶えがちになっていることが、今の社会におけるコロナ禍の大きな特徴です。特に、声を出すことが難しい状況というのは、声優や歌手のような声を生業としている人にとっては特に苦しいことだと思います。
「伝達・情報」がコンセプト第1位になったのは、いのりちゃんがラジオでおっしゃったように、コミュニケーションをする、言葉を交わすということの大切さが歌詞の中に込められているからではないでしょうか。
第2位は「連帯」となり、今までのアルバムの中で最も高い順位という結果になりました。「連帯」は文字通り何らかの連帯や繋がりを連想させるコンセプトです。
語同士の繋がり分析の項目でも述べたように、コンセプト分析においても「人との繋がり」が大きなテーマの一つであることが示されました。
コロナ禍で人とのコミュニケーションが途絶えがちになっている今だからこそ、「人との繋がり」が必要であるというメッセージであると同時に、「glow」というアルバムを通じてファンの心に寄り添い、絆をさらに深めていきたいといういのりちゃんの思いが反映されていると考えられます。
ファンとの絆を歌った曲として「僕らは今」がありますが、シングルのカップリング曲として初めて「glow」に収録されました。
これについて、インタビューで次のように語っています。
ライブ会場で声が出せなくなってしまった今、ファンの皆さんにとっては「これを一緒に歌うまでは倒れるわけにはいかない!」くらいの存在になっていると思うんです。結果的に、すごく“今”とリンクする楽曲になっていった感覚があって
第3位には「自然」がランクインし、このコンセプトも今までのアルバムの中で最も高い順位という結果になりました。
ここで、第10位にランクインした「感情(プラス)」との関係について見てみます。
「感情(プラス)」は今までのアルバムで常に上位でしたが、「glow」では最も低い順位となりました。
つまり、歌詞における「感情(プラス)」という感情表現が減少した代わりに、「自然」という情景描写が増加したと考えることができます。
これまでも述べてきたように「glow」の大きなテーマは「日常の中にある大切なもの」です。
すなわち、テーマである「日常」を情景描写を通じて表現することで「自然」が第3位になり、相対的に「感情(プラス)」の順位が10位に下がったということではないでしょうか。
第4位には「現在」がランクイン。このコンセプトも今までのアルバムの中で最も高い順位となっています。
「未来」といった遠いものよりも、「日常の中にある大切なもの」という身近な「現在」をテーマにしていることがこの結果からも分かります。
第6位にランクインした「理性」というコンセプトは、「知る」「思う」「考える」など物事に対して論理、思考を伴う精神の働きを表す語をグループ化したコンセプトです。
いのりちゃん自身も様々なインタビューで話してるように、この3年間で自分の人生について見つめ直した人が沢山いたと思います。「理性」が第6位となったのは、コロナ禍でより内省的になった状況を反映した結果かもしれません。
「道のり」は、今までのアルバムの中で最も低い第9位となりました。
「道のり」は「夢」「先」「叶う」といった人生における到達点、目標及びその道のりを連想させる語をグループ化したコンセプトです。
頻出語TOP10やアルバムの特徴語分析の項目でも見たきたように、「夢」という語は「glow」においては重要性が低下しましたが、コンセプト分析においてもその傾向が明確に示されたと言えます。
「道のり」というコンセプトは、「glow」より前の期間においていずれもTOP3から外れたことはありませんでした。つまり、夢や目標に向かっている人たちの背中を押すような応援ソングが水瀬いのり楽曲の大きな特徴の一つでした。
「glow」において応援ソングをあまり歌わなくなったという事実は、水瀬いのりさんのアーティスト人生における大きな転換であると考えられます。
このことについて、7月23日に放送された文化放送「こむちゃっとカウントダウン」内でいのりちゃんは以下のように語っています。
みんながイメージするアーティスト像ってもしかしたら応援歌とかパワフルな歌声とか、それって本当の私なのかなっていう悩みがいつもあって。みんなが応援してくれればしてくれるほどそうあらなきゃって思いながら歌ってたんですけど、こんなに力いっぱい歌う私ってホントに私なのかなっていうのが多々あって。
7月24日に放送された MELODY FLAG 第303旗においても、ファンがイメージする水瀬いのりらしい歌声と、自分自身が理想とする歌声のギャップに苦悩していたことが明かされています。
その苦悩は自分の楽曲をあまり聞き返せなくなるほどで、自分の歌声だけでなく心も苦しかったという深いものでした。
そして、「glow」はその苦悩を払しょくしたいという思いの元に制作されたと話しており、これが「glow」になって応援ソングをあまり歌わなくなった大きな理由であると考えられます。
さいごに
本分析のまとめです。
・頻出語TOP10…「夢」がTOP10圏外、「glow」のテーマを示す「ほら」「歩く」「今日」がTOP10入り。
・アルバム特徴語…「歩く」「今日」「日々」「始まる」「ねぇ」は「glow」のテーマと合致する特徴語。
・語の繋がり…「道」-「歩く」、「日々」-「行く」、「光」-「数える」、「手」-「繋ぐ」、「手」-「重ねる」が「glow」のテーマと関連性あり。
・コンセプト…「伝達・情報」が第1位。「連帯」が今までと比べて大きく順位を伸ばし第2位。逆に「道のり」は今まではTOP3を守ってきたが、「glow」では第9位となり大きく順位を落とした。
ラジオやインタビューではすでにたくさん語られていますが、テキストマイニングというアプローチによって改めて「glow」のテーマやいのりちゃんの思いを確認することができました。
ところで、こむちゃやメロフラでいのりちゃんが赤裸々に語ってくれたこれまでの苦悩は、こちらも胸が苦しくなるほど深いものでした。
でもそれって、僕らファンに対して絶対的な信頼があるからこそ、ネガティブな部分も含めて本音をさらけ出してくれたのだと思います。
だからこそ、「glow」を引っさげたこのツアーを通じて、いのりちゃんと僕らファンとの心の距離はより一層縮まるものと確信しています。
「glow」というアルバムは、歌詞のテーマだけでなく、歌い方やサウンドのテイストも大きく変化したアルバムとなりました。
もちろん、その大きな変化に戸惑う人も少なくないと思います。
ただ、自分としては「アーティスト水瀬いのり第2章」がとても楽しみなのです。
「筋書きなんて何もいらない未来」に向かって、いのりちゃんと一緒にこれからも歩いていこうと思います。
あと、これは宣伝なのですが、「八月のスーベニア」の歌詞考察をやってみました。
こちらの記事もぜひご覧になって頂けましたら幸いです。