水樹奈々・水瀬いのり研究部

水樹奈々、水瀬いのりについての研究データがメイン。その他、聖地巡礼、別子銅山、新居浜太鼓祭りなど。

【水瀬いのり】テキストマイニングによる歌詞分析(1)(声優アーティスト比較/頻出語・人称表現)

本記事は水瀬いのりさんの歌詞に着目しその特徴について分析を試みたものです。

具体的には、テキストマイニングの手法により歌詞を数量化し独自の考察を加えました。
また、数量化したデータは、一部に統計的手法を適用し考察を補完しています。

データの解釈や考察について自分なりに頑張ってみましたが、あまりこういう考察はやったことがないので「ちょっとここはおかしいぞ?」という部分がちょいちょいあるかもしれません(最初から言い訳すいません笑)。

そこはどうか温かい目で見てやって下さいまし。
あくまで参考程度ということでよろしくお願い致します。

分析は、以下の二つに大きく分けて行っております。

水瀬いのりと同年代の声優アーティスト(小倉唯上坂すみれ内田真礼大橋彩香早見沙織)との比較分析

水瀬いのりのアルバム発売日までの楽曲を一区間とした期間比較及び頻出語の文脈分析

テキストマイニングは「KH Coder」というフリーソフトを利用しました。
※統計的手法については、いのりまち情報部の具入り味噌汁さん(https://twitter.com/inorimaaya )にアドバイスを頂きました。ありがとうございました!

 

他の声優アーティストの選定理由と対象楽曲

選定理由

小倉唯上坂すみれについては、水瀬いのりと同じキングレコード所属であり、比較対象とすべき声優アーティストして最も適当であると考えられるため

内田真礼については、ロック色が強いイメージがあり水瀬いのりとは違った個性があると考えたため

大橋彩香早見沙織については、二人とも筆者が好きな声優アーティストで楽曲にある程度精通しているため

 

対象楽曲

水瀬いのり…「夢のつぼみ」から「REAL-EYES」までの61

小倉唯…「Raise」から「Fightin★Pose」までの54曲(最新アルバム「Tarte」の楽曲は対象外)

上坂すみれ…「七つの海よりキミの海」から「生活こんきゅーダメディネロ」までの64

内田真礼…「創傷イノセンス」から「HIKARI」までの60

大橋彩香…「YES!」から「Lumière」までの50

早見沙織…「やさしい希望」から「透明シンガー」までの43

専門用語の説明

延べ語数…分析対象の歌詞テキストから、意味を持つ最小の言語単位に分解された「語」の合計

異なり語数…分析対象の歌詞テキストから、意味を持つ最小の言語単位に分解された「語」の種類の合計

※例えば、「夢」という語が歌詞に複数回登場した場合、延べ語数では登場した回数全部がカウントされるが、異なり語数上では「1」としかカウントされない。

 

声優アーティスト別頻出語の特徴分析

分析概要

各声優アーティストの歌詞の頻出語を抽出し一覧表にしました。
「君」「僕」などの人称代名詞については別途項目を設けて集計・分析を行っているので、本分析の頻出語集計からは除外しています。

まず、声優アーティスト6人全体の頻出語の傾向について、頻出語TOP10を抽出しJ-POP全体の頻出語の傾向と比較分析を行いました。

次に声優アーティストそれぞれの特徴について、頻出語TOP20を抽出し頻出語の傾向からそれぞれの声優アーティストの特徴を考察しました。

全体の特徴

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各声優アーティストの頻出語TOP10を全体的に見てみると、いくつかの語は各声優アーティストの頻出語TOP10に共通して登場していることが分かりました。

そのような語を下記の通りに分類し、どのような語が声優アーティスト6人の中で「流行り」の語になっているのかを見てみます。

①いずれか5人のTOP10に共通してランクインしている語…「」「」(黄色のシート)
②いずれか4人のTOP10に共通してランクインしている語…「」(ピンクのシート)
③いずれか3人のTOP10に共通してランクインしている語…「未来」「」「」「」「世界」「明日」「知る」(緑のシート)

これらの語がJ-POPの歌詞の頻出語と違いがあるのかを比較します。
J-POPの歌詞の頻出語は下記のサイトを参考にしました。

withnews.jp

このサイトによれば、年代を問わず頻出している語は「」「」「」など、2000年及び2010年代に特徴的に見られる頻出語は「」「」「」「自分」「信じる」「変わる」「未来」「笑う」となっていました。

①、②については全ての語がJ-POPの頻出語と一致、③については「未来」「手」「心」がJ-POPの頻出語と一致するという結果になりました。

つまり、ざっくりとした言い方になりますが、声優アーティストの歌詞の流行り語というのはJ-POPの歌詞の流行りの語とある程度共通している、ということですね。

まあ、声優アーティストもJ-POPに含まれると考えれば、ごく当然の結果かもしれません。

ちなみに、③の「世界」について下記のサイトに興味深い分析を見つけました。

qiita.com

「世界」の2017年の出現頻度は、1991年と比べて4倍近くまで伸びており、「世界」もまた最近の「流行り」の語であることが分かりました。

 

水瀬いのりの特徴

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ちょっと余談ですが、そもそもこの分析をやろうと思ったきっかけは、いのりちゃんの歌詞ってデビュー曲の「のつぼみ」から始まり、やたら「」って言葉が多いなというものだったんですよね。

たぶん、いのりファンの方であれば自分と似たようなことを感じてる方は結構いらっしゃるのではないかなと思います。

そして、実際に頻出語を集計したみたところ、上記の頻出語TOP20に示す通り、「夢」は水瀬いのりさんの歌詞で最も使われてる語という結果になりました。

「夢」は、水瀬いのりさんの楽曲を象徴する語であることが統計的にも判明したということですね。

次に、第2位には「」が入っています。

「あの日の空へ」「春空」のように、タイトル自体に「空」が入っている曲があったり、空をモチーフとした曲が多いのも水瀬いのりさんの楽曲の特徴を示すものだといえます。

その他、「未来」「行く」「笑う」「信じる」「明日」という前向きさを連想させる語が並んでいるのも、水瀬いのりさんっぽいなと思いました。

水瀬いのりさんの楽曲には、いわゆる応援ソングが多いというのが個人的なイメージですが、そのイメージに近い語が並んでいる感じです。

ほら」という「感動詞」が第8位に入っているのも注目ポイントですね。
辞書的な意味としては「何かを指し示して、相手の注意をひくときに発する声」となっています。

つまり、「ほら」を歌詞に使うのは、聞き手の想像を掻き立てたり、歌詞をより印象付けるためであると考えます。
そうすることで、歌詞のメッセージを聞き手により深く届けようとしているのが水瀬いのりさんの歌詞の特徴の一つであるといえます。

その他の声優アーティストの特徴

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水瀬いのりさん以外のアーティストですが、まずは、小倉唯さんの頻出語を見てみましょう。

全体を見てみると「LOVE」「好き」「恋」といった恋愛を連想させるような語が入っています。「」「気持ち」「ココロ」は、恋愛の気持ちを表現した語でしょう。

また、「一緒」「甘い」とった語もハッピーな恋愛を想像させます。


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上坂すみれさんの頻出語は非常に独特です。

呂布」「ツン」「ヤバい」「よっぱらっぴ」「S・O・X」「地獄」といった固有名詞は、上坂すみれさん以外ではなかなか出てこないような語でしょう。

上坂すみれさんの楽曲は独自の世界観を構築しているといえます。

 

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内田真礼さんについては、「今」「夢」「空」「未来」「手」「声」といった頻出語TOP10の多くが水瀬いのりさんの頻出語TOP10の多くと共通しています。

一方、頻出語第2位の「世界」は、6人の声優アーティスト中で最も高い順位になっており、内田真礼さんを特徴づける語だと思われます。


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大橋彩香さんについては、小倉唯さんと同様、「LOVE」「好き」「恋」といった恋愛を連想させるような語が並んでいます。

ただ、「好き」の順位が小倉唯さんに比較して低いのと「涙」という語が18位に登場しているので、どちらかといえばあまりハッピーじゃない恋愛もテーマにしているのかもしれません。

」「明日」「未来」「信じる」といった前向きな語からは、応援ソング的な要素が読み取れます。


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早見沙織さんの頻出語第1位は「」となりました。11位以下では「生きる」「言葉」「」「いつか」「」といった語が特徴的となっています。

一方、「夢」は声優アーティスト6人のうち最も順位が低い13位でした。

早見沙織さんの歌詞は、夢や未来といった遠いものよりも、自分自身といった身近なものをテーマとしているのではないかと考えられます。

 

各声優アーティスト同士の関連性分析

頻出語の出現傾向を分析し、各声優アーティスト同士の関連性を視覚的に把握できるように図に示しました。

 

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図の見方ですが、原点から遠く離れている語ほど特徴的、反対に原点に近くなれば特徴のない語、つまり、どのカテゴリーにおいても普遍的に出現している語ということになります。

また、声優アーティスト同士の距離を見ることによって、頻出語の出現傾向が似ているのかそうでないのかが分かるようになっています。

小倉唯さん、大橋彩香さんは両者ともに恋愛を連想させる語が頻出語になっていましたが、上記の図でもお互い近い所に位置していますね。

一方、頻出語の多くが共通している水瀬いのりさんと内田真礼さんの距離も近くなっています。

上坂すみれさんはどの声優アーティストからも遠くに離れているのが一目瞭然かと思います。

一人称、二人称の使い方の分析

分析概要

本分析では、前述した頻出語とは別に一人称・二人称の使い方に着目しました。

日本語の人称代名詞は、例えば同じ一人称でも「わたし」「僕」といったように表現が異なり、アーティストによって人称代名詞の使い方に個性が出るのではないかと考えたからです。

以下の通り、一人称・二人称ごとに頻出語を集計し延べ語数に対する出現率をグラフに示しました。

一人称の表現別分析

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一人称の使い方において最も特徴的であるのは、水瀬いのりさんの「僕」の出現率が他の声優アーティストに比較して高いということでしょう。

「僕」は比較的男女の性差を感じることが少ない一人称であり、女性アーティストがあえて「僕」という一人称を使うことによって主語が曖昧になり、普遍性を持たせる効果があるのではないかと考えます。

つまり、応援ソングなどの普遍的なメッセージを届けたい場合に使われやすい一人称が「僕」なのではないでしょうか。

水瀬いのりさんの歌詞に「僕」が多いという結果は、水瀬いのりさんの楽曲には応援ソングが多い傾向にあることを示しているといえます。

二人称の表現別分析

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全体をざっくり見てみてると、「君」の出現率は「水瀬いのり小倉唯内田真礼大橋彩香」が高く、「上坂すみれ早見沙織」が低いという結果になりました。

逆に、「あなた」の場合は「上坂すみれ早見沙織」の出現率が高く、「水瀬いのり小倉唯内田真礼大橋彩香」は低いという対照的な結果となっています。

「あなた」という二人称は、「君」という二人称に比べて年齢層が高いイメージがあると思います。

また、下記のサイトの分析によれば、J-POPの歌詞に「あなた」という二人称が使われるのは、1990年以降、減少傾向にあるとのことでした。

past-orange.com


早見沙織さんの楽曲は、シティポップを中心としたオシャレで大人な楽曲が多いです。

上坂すみれさんはご本人の趣味に昭和歌謡サブカルチャーなどがあり、その影響もあってか80年代、90年代を彷彿とさせるような曲が多数あります。

早見沙織さん、上坂すみれさんの楽曲に「あなた」という二人称が多いのは、以上のようなお二人の楽曲の特徴を表しているのではないかと考えられます。

 

水瀬いのりさんについてですが、二人称合計の使用頻度上坂すみれさんを除いた他の声優アーティストと比較して低くなっているのが注目ポイントでしょうか。

理由として考えられるのは、水瀬いのりさんの楽曲は恋愛をテーマとした楽曲が比較的少ないというのが挙げられると思います。

恋愛をテーマとした楽曲は、対象とする相手の存在を前提としていることがほとんどでしょう。当たり前ですが、相手がいなければ恋愛はできないわけですから。

なので、その対象を示す二人称が多用されるのは必然だと考えられます。

反対に、水瀬いのりさんの楽曲は恋愛をテーマとした楽曲が比較的少ないため、その分「君」や「あなた」といった二人称の種類を問わず、二人称合計の使用頻度が低くなっているのではないでしょうか。

 

まとめ

長くなってしまったので、一旦ここで区切ります。
本記事で判明したことを以下にまとめます。

・声優アーティストの歌詞の流行り語というのはJ-POPの歌詞の流行りの語とある程度共通している
水瀬いのりの頻出語は、「」「」「未来」「笑う」「ほら」などが特徴的
小倉唯大橋彩香は、「恋愛」を示す語が頻出語上位になっている
内田真礼は、「世界」が特徴的
早見沙織は、「」が頻出語トップ、「」は6人の中で最も順位が低い
水瀬いのりの「」の出現率が6人の中で最も高い
水瀬いのり二人称合計の出現率が低い


次回は

コンセプトに見る各声優アーティストの特徴
水瀬いのり歌詞特有の表現に関する比較分析
・その他の比較分析

についての記事になります。