水樹奈々・水瀬いのり研究部

水樹奈々、水瀬いのりについての研究データがメイン。その他、聖地巡礼、別子銅山、新居浜太鼓祭りなど。

【水瀬いのり】テキストマイニングによる歌詞分析(3)(期間比較/文脈分析)

水瀬いのりさんの歌詞をテキストマイニングにより数量化し、その特徴を分析・考察した記事の3回目(最終回)となります。

本記事は、

水瀬いのりのアルバム発売日までの楽曲を一区間とした期間比較及び頻出語の文脈分析

となります。

 

 

頻出語及びコンセプトのおさらい

分析概要

前回までは他の声優アーティストとの比較分析を行ってきましたが、本分析は水瀬いのりさんを掘り下げた分析となります。

まずは、おさらいの意味も兼ねて頻出語TOP30、コンセプトTOP20を見ていきます。

加えて、共起ネットワーク図という語同士の繋がりをネットワーク図にしたものを示し、どのような言葉がどのような言葉と一緒に使われているのかを考察します。

 

頻出語TOP30

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前回までの分析において、水瀬いのりさんの頻出語はTOP20までしか示しておりませんでしたが、本分析では対象を広げてTOP30までとしました。

今までの記事でも見てきましたが、水瀬いのりさんの頻出語第1位は「」となっており、水瀬いのりさんを象徴する語となっています。

続いて、第2位の「」も水瀬いのりさんらしい語といえます。

その他、「未来」「行く」「笑う」「信じる」「明日」といった前向きなイメージを連想させる語も水瀬いのりさんを特徴づける語でしょう。

21位以下にも「」「笑顔」といった前向きなイメージを連想させる語が登場しています。

コンセプトTOP20

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前回までの分析において、水瀬いのりさんのコンセプトはTOP10までしか示しておりませんでしたが、本分析では対象を広げてTOP20までとしています。

前回の記事で既に見てきましたが、水瀬いのりさんのコンセプトTOP3は「道のり」「前進」「連帯」で、「夢や目標に向かってみんなと一緒に前に進んでいく」というのが大きなテーマであることを考察しました。

また、「道のり」「自然」「明るいもの」の順位は、比較対象とした他の声優アーティストを含めた6人の中で最も高い順位という結果でした。

これは、6人の声優アーティストのうち水瀬いのりさんの曲は、「道のり」「自然」「明るいもの」についての歌詞が最も多いということを示しています。

TOP11以下についてですが、「感情(マイナス)」「停滞・後退」「別れ」「暗いもの」「過去」といったネガティブなイメージを連想させるコンセプトが下位になっています。
このうち、「別れ」と対立概念である「出会い」も下位になっていることから、水瀬いのりさん楽曲においては、出会いと別れについて歌った歌詞が少ないという結果になりました。

出会いと別れで連想しやすいのは恋愛ですが、「恋愛」は最下位でした。
改めて、水瀬いのりさんの歌詞に恋愛的要素が少ないということが分かりました。

 

共起ネットワーク図

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どのような言葉がどのような言葉と一緒に使われているのか、語同士の繋がりを分かりやすくしたネットワーク図です。

まず、曲のタイトルが容易に連想できる語の繋がりを見ていきましょう。

「僕らー今」→「僕らは今
「途中ー旅」→「旅の途中
「ココローシュビデュバ」→「ココロはMerry-Go-Round

次に、水瀬いのりさんの個性の一つである前向きさを連想させる語の繋がりを以下の通り示します。

光ー信じるー希望」「幸せー生きる」「声ー笑う」「前ー勇気

その他の注目ポイントとしては「手ー重ねる」です。

「手」を使った慣用句は様々なものがあると思いますが、その中でも「重ねる」との結びつきが強いということは、人との繋がりを連想させるような歌詞が多いと推察されます。

水瀬いのりさんの歌詞は、人との繋がり・連帯がテーマの一つになっていることが改めて確認できました。

 

アルバム期間別特徴分析

分析概要

水瀬いのりさんのアーティスト活動期間のうち、デビュー曲からアルバム「Catch the Rainbow!」発売日までの期間を、アルバム「Innocent flower」及びアルバム「BLUE COMPASS」のそれぞれの発売日で3分割し、3つの期間で特徴的な語やコンセプトの傾向を比較・分析しました。


対象楽曲数及び延べ語数は以下の通りです。

・「Innocent flower」…18曲(5,286)
・「BLUE COMPASS」…17曲(5,046)
・「Catch the Rainbow!」…16曲(5,508)
・「Catch the Rainbow!」より後の期間…10曲(3,096)

この3つの期間に含まれれる曲は、それぞれのタイトルとなっているアルバムに収録されている曲だけでなく、それぞれの期間に発売されながらもアルバムには収録されなかった曲も含まれます。

期間を区別する際の名称は、便宜上、それぞれのアルバムのタイトルとしましたが、今回の分析結果は、それぞれのアルバムの特徴や傾向と必ずしもイコールではない点にご注意ください。

なお、「Catch the Rainbow!」より後の期間については、曲数が少ないため本分析の対象からは除外しています。

特徴語の期間別分析

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上記は、分割したそれぞれの期間において特徴的に出現した語の一覧です。

「Innocent flower」と「Catch the Rainbow!」のTOP3にはいずれも「」という水瀬いのりさんの代表的な語が登場しています。
一方、時間を表す語において「Innocent flower」では「未来」、「Catch the Rainbow!」では「」となっており違いが見られます。

BLUE COMPASS」ではTOP3のうち「変わる」「」という語が登場しており、いずれも他の期間のTOP3とは違う概念を持った語です。

その他、「Innocent flower」の「途中」は「旅の途中」、「BLUE COMPASS」の「」は「アルペジオ」をそれぞれ連想させます。


「Catch the Rainbow!」の「好き」「気持ち」といったストレートな好意を示す語や感情そのものを示した語は、他の期間とは違った特徴の語です。

コンセプトの期間別分析

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各期間ごとにコンセプトを集計し、上位TOP10をグラフにしてみました。

いずれの期間においても「前進」「道のり」が上位となっており、「夢や目標に向かっていく」というメッセージが、期間を問わず水瀬いのりさんの普遍的なテーマになっているといえます。

次に各期間の特徴的なコンセプトについて見ていきます。

まず「Innocent flower」では、4位に「意志」が登場しています。
これは、「夢や目標」に向かっていく自分自身の意志又は決意表明をテーマにしているためではないでしょうか。

「Innocent flower」は水瀬いのりさんのデビューを含めた期間であり、これからのアーティスト活動に向けた自分自身のメッセージであると考えることができます。


次に「BLUE COMPASS」ですが、「明るいもの」が第5位に登場しており、他の二つの期間よりも上位となっています。

「明るいもの」は、「明るい」といった何かを形容する表現であったり、「光」といった明るさそのものを連想させる表現を含めたコンセプトです。

従って、「明るいもの」は文脈によって様々な使われ方をするコンセプトといえますが、「BLUE COMPASS」の全体的なテーマを推察してみると、コンパスの指し示す先に「光」があり、その「光」に向かって進んでいく、というようなテーマが「BLUE COMPASS」にあるのではないでしょうか。

また、「停滞・後退」が10位に登場しているのは、ここまで進んできた道を一度立ち止まって振り返ってみるというメッセージなのかもしれません。


「Catch the Rainbow!」では「伝達・情報」がトップになっています。
このことが示すのは、夢や目標に向かっていくという前向きなメッセージをみんなに呼びかける又は伝えていくことをテーマにしている、ということではないでしょうか。

一方、他の2つの期間では登場していなかった「アプローチ」が9位に登場しています。
「アプローチ」とは、「目的や対象に対して近づこうとする概念又はその手段、取り掛かり」と定義しました。

これを、「Catch the Rainbow!」に当てはめて考えると「対象」は「Rainbow」、「近づこうとする概念」は「Catch」となり、「Catch the Rainbow!」と「アプローチ」の概念はぴたりと一致します。

つまり、「Catch the Rainbow!」というタイトルをそのまま反映したコンセプトが、「Catch the Rainbow!」の特徴的なテーマの一つとなっていると考えられます。


文脈分析

分析概要

この項目の分析は、上位頻出語のうち、文脈によって意味が変わる抽象的な語を独自に設定したコンセプトに従って意味分類し、それらの頻出語の使われ方について特徴や傾向を分析したものです。

分析の対象とした語は、「」「」「」「」「変わる」「」です。

それぞれの語が登場する前後のフレーズ及びそのフレーズが登場する曲のタイトルを示した一覧表を作成し、集計されたコンセプトの割合をグラフ化しました。

なお、文脈の解釈は筆者の主観によるものであり、当然ながら人によって解釈が異なる場合があります。その点につきましてはご理解・ご了承ください。

「夢」の分析及び傾向

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「夢」を、人生の目標や到達点として捉えているものを「目標・憧れ」、儚いもの・非現実的な概念として捉えているものを「非現実」、「夢を見る」といった人間の生理的現象として捉えているものを「知覚」としてそれぞれ分類しました。

その結果「目標・憧れ」の割合が82%でした。
夢や目標というテーマが水瀬いのりさんを特徴づけるコンセプト通りの結果といえるでしょう。

「空」の分析及び傾向

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「空」は大きく分けて以下の二つに分類しました。

<分類・1>
風景又は心情を重ねた情景として捉えているものを「情景・風景」、時間的又は空間的な概念として捉えているものを「時間・空間」として分類しました。

<分類・2>
「空」を描写する表現の違いによって、「青い」や「白い」といった色によって形容しているものを「」、「広い」「澄んだ」といった状態によって形容しているものを「広・澄」、形容詞がなく漠然とした表現を「その他」として分類しました。

集計の結果ですが、分類・1は「情景・風景」が62.5%となりました。水瀬いのりさんの歌詞における「空」の6割ほどは情景描写に使われていたということになります。

分類・2については、「色」が33.9%、「広・澄」が16.1%、「その他」は50%という結果になりました。
つまり、「空」の描写方法の半数は、抽象的な表現であるということになります。

「手」の分析及び傾向

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「手」の動作を表す表現によって「繋ぐ・触る」「伸ばす・届く」「振る」に分類し、「手に入れる」「手の中に」といった所有を表す表現または手段を表す表現などは「手・その他」として分類しました。

集計の結果、「繋ぐ・触る」が43.8%で、分類した4つ項目の中で最も高い割合となりました。
つまり、水瀬いのりさんの楽曲にとって繋がりや連帯が大きなテーマのひとつとなっていることが、この結果からも判明しました。

「心」の分析及び傾向

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「心」は大きく分けて以下の二つに分類しました。

<分類・1>
「心が痛い」など感情の動きを表しているものを「感情」、外部からの刺激を認識する精神の働き又は思考を伴う精神の働きを表現したものを「感性」、「肉体と精神」というように人の内面や精神そのものとして捉えているものを「精神」にそれぞれ分類しました。

<分類・2>
自分以外の他者の「心」について表現されているものを「関係性」、自分の「心」を表現しているものを「個人」として分類しました。


集計の結果、分類・1は「精神」が53.2%で、過半数は「心」を精神そのものとして表現していることが分かりました。

分類・2については「関係性」が25.5%で、「心」は個人だけでなく、他者との関わりを表現することもあるという結果になりました。


「変わる」の分析及び傾向

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「変わる」はまず、否定形になっているものを「変化あり」、否定形以外のものを「変化なし」として分類しました。

次に、人の気持ちや考えなどの精神的なものを「個人・内面」、周りの環境といった物理的なものを「物質・環境」として分類し、それぞれで変化の有無を集計しました。

集計の結果、変化の有無については「変化あり」が58.3%となりました。

「個人・内面」については「変化なし」が60.7%、「物質・環境」については「変化あり」が80%という結果になりました。

「物質・環境」について、「物質・環境」を変わるものとして捉えていることが多いということは、過去を振り返ったり思い出したりしていることが多いのではないかと考えられます。

変化した「物質・環境」というのは、それだけ時間が経過したからでしょう。

一方、「個人・内面」を変わらないものとして捉えていることが多いというのは、精神の強さや意志の固さを表現しているのではないかと考えられます。

つまり、精神の強さや意志の固さというのは、夢や目標に向かっていくという水瀬いのりさんの特徴的なテーマと深く結びついたメッセージだと考えることができます。

「胸」の分析及び傾向

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「胸」は大きく分けて以下の二つに分類しました。

<分類・1>
感情の動きを表しているものを「感情」、感情以外の精神の働きを表現しているものを「精神」、肉体的な意味又は「感情」「精神」に含まれないものを「その他」にそれぞれ分類しました。

<分類・2>
「胸」が使われている歌詞の文脈によって、ポジティブなものとネガティブなもの、ポジティブネガティブどちらともいえないものを「中立」として、それぞれ分類しました。

集計の結果、分類・1については「感情」が60%となりました。
分類・2については「ポジティブ」が55%という結果でした。

つまり、「胸」は少なくとも半数以上はポジティブな感情を表現するために使われていることが分かりました。

まとめ

水瀬いのりさんの歌詞について、本分析で分かったことを以下にまとめます。

<期間別特徴語>
・「Innocent flower」…「」「未来」「途中
・「BLUE COMPASS」…「変わる」「」「
・「Catch the Rainbow!」…「」「」「好き」「気持ち

<期間別特徴コンセプト>
・「Innocent flower」…「意志
・「BLUE COMPASS」…「明るいもの」「停滞・後退
・「Catch the Rainbow!」…「伝達・情報」「アプローチ

<頻出語の文脈特徴>
・「」…人生の目標や到達点として捉えているものの割合が82%
・「」…情景描写として使われている割合が62.5%、形容詞のない描写表現の割合は50%
・「」…繋がりや連帯を連想させる「繋ぐ・触る」の割合が43.8%
・「」…精神そのものとして捉えている「精神」の割合が53.2%、他者との関係性を示す「関係性」の割合が25.5%
・「変わる」…精神的なものを示す「個人・内面」は「変化なし」が60.7%物質的なものを示す「物質・環境」は「変化あり」が80%
・「」…感情を示す割合が60%ポジティブなものとして表現されている割合が55%

さいごに

最後まで読んでくださいましてありがとうございました。

過去の記事の中でも言ったのですが、この分析の最初のきっかけは「いのりちゃんの歌詞って、夢ってワードが多くない?」というものでした。

そこから、「いのりちゃんの歌詞の全体のテーマって何だろう?」「全体のテーマは期間ごとに違ったりするのかな?」「ほかの声優さんと比較した場合、いのりちゃんの歌詞ってどういう位置付けになるんだろう?」と好奇心がどんどん膨らんでしまい、このように非常に長ったらしい記事になってしまいました。

こういった分析や考察はほとんどやったことがなかったので、非常に時間がかかりました。着手したのが1月末ぐらいだったのですが、時には土日の空いた時間を全てこの分析に費やしたこともありました。

分析や考察の途中では、分析のための分析というか最終的に何を知りたいのか目的を見失ったり、集計したデータを考察しようとしても結局何が言いたいんだが分からなくなったり
趣味でやってるはずなのになんでこんなにきついんだろうって思ったことは1度や2度ではありません(苦笑)。

でもなんとか最後まで完成にこぎつけたのは、やっぱり自分がいのりちゃんのファンで、もっといのりちゃんの歌詞の世界を理解したいというモチベーションが高かったからだと思います。

なので、今後も歌詞の分析や考察は続けていきたいと考えています。
7月には新しいアルバムの発売ですよね。

次のアルバムの特徴的な語やテーマは何か。それによって何をファンのみんなに伝えたいのか。

その一方、このコロナの蔓延によって世界は大きく変わりましたが、音楽の歌詞の世界でもネガティブなワードが増えたり逆に連帯や絆を表すワードが増えたりしているという分析が出ています。

そのような世の中の状況がいのりちゃんの歌詞にも反映されるのか。
今から興味が尽きません。

ただ、自分自身、考察が浅かったり分析が甘かったり、いろいろと力不足であることを痛感しました。

今回、いのりまち情報部の具入り味噌汁さんから貴重なアドバイスを頂きましたが、加えて次の分析・考察の際には、いのりまち歌詞対面部、まちの考察班など、いろんな町民の方々と情報交換をしながら、いのりちゃんの楽曲の理解をもっと深めていければいいなあと思っています。

そうやって、今よりももっといのりちゃんのことを好きになっていけたら嬉しいですね。


ということで、ありがとうございました。
そして、お疲れさまでした(笑)。